蒲池勢至著『真宗民俗の再発見』〜生活に生きる信仰と行

事〜を読んで以来、いつかはこの三寺まいりをしてみたいと念願していました。

 特に、その思いを強くしたのは、一昨年、NHKの連続ドラマ「さくら」に、その光景が流されてからです。

 年明けて間もない1月14日〜16日、二泊三日の日程で、この度は、浄蓮寺運営委員の《自主》研修旅行ということで、24名の皆さんと共に参拝をしました。

 住職がこの時期、旅行に出かけるということになると、法務がその前後に集中することになり、その疲労と、折りからの風邪よって、一時は旅行を断念しようとも思いましたが、「親鸞さまの報恩講のお参りであるぞ」との仏さまのご催促と、同行の励ましによって、何とか無事に、所期の目的を達することができました。 

  浄土真宗本願寺派(西本願寺)では、宗祖親鸞聖人のご遺徳を偲び、そのご恩に報謝する法要を、「報恩講」と言い、毎年1月9日からご命日の16日まで、七昼夜にわたり勤めます。

 本山では、御正当の忌日に法要を営むので「御正忌(ごしょうき)報恩講」と言い、また、一般寺院の報恩講は、本山より日時を早めて営むので「御取越(おとりこし)報恩講」と言われます。

 この法要は、浄土真宗では、最も大切な年中行事であり、本堂の御荘厳も、最高のものが飾られます。

 報恩講は、全国のどの寺院でも営まれ、それぞれに独自の伝統を受け継いでいますが、特に蓮如上人のご教化の行き届いた北陸や東海、近畿地方では、宗派を超えた地域社会の行事(イベント)になったところもあり、この古川町の三寺まいりは、その格好の例であります。

 

 「三寺まいり」は、15日夜、宗祖の御逮夜に、町内の円光寺、真宗寺、本光寺を次々にお参りをして、勤行(おつとめ)に加わり、「御伝鈔」「法話」を聴聞し、夜を徹して宗祖のお徳を讃嘆するものです。   

 この三寺まいりは、この地方にもう、200年以上も前から続く伝統行事ですが、雪景色のロマン溢れる雰囲気の中で、それが若いカップルの出会いの場にもなることから、近年では多くの人を集め観光化しています。

 

 

 お寺の中では厳粛な法要が営まれていますが、一歩通りに出ますと、道路の真ん中には、高さ2メートルほど、二抱えもある雪像のロウソクが立ち並び、道端には、屋台が設けられ、商工会の青年達が、ゴヘイ餅、うどん、甘酒等を売っています。どこかの邦楽倶楽部でしょうか?着物姿の娘さんたちがお琴のライブ演奏を行っています。町の中を流れる瀬戸川べりには千本ロウソクが用意され、老若男女が静かに手を合わせています。

 いくら生活に密着した信仰と言っても、観光化には抵抗がある宗門人もあろうかと思いますが、地方寺院の報恩講が、日数も少なくなり、お荘厳も簡素化され、次第に寂(さび)れている中、この三寺まいりは、今後の報恩講やお寺の行事の在り方、営み方に示唆を与えるもので、大いに参考になりました。

 

 

 

 

平成17年 (2005) 聞法旅行予定:8月29〜31日〔富山「おわら風の盆」前夜祭を訪ねて〕

 

本願寺御正忌報恩講参拝 

飛騨地方冬景色スナップ

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