●法要と音楽 

 近年、お寺の法要に、音楽が挿入されることが多くなりました。どこのお寺でも、法話の前後には「真宗宗歌」や「恩徳讃」を斉唱します。また、法要の前にはBGMが流され、儀式の中では入・退出等の楽が流されます。
 お寺によっては、合唱団が結成され、練習や公演を重ねておられるところもあります。宗派でも、教区や本願寺で、定期的に、所属の合唱団が集まって大掛かりなコンサートが開かれます。法要に音楽を用いることは、今ではごく当たり前のこととなりました。

●音楽になった勤行(おつとめ)

 確かに、仏教讃歌や儀式音楽が多用されるようにはなりましたが、それらはあくまでも「脇役」であり、「主役」は何と言っても
勤行〔ごんぎょう:おつとめ〕でありました。
  しかしながら、この勤行そのものが音楽になった画期的な作法が誕生しました。来る平成23年~24年に厳修される親鸞聖人750回大遠忌法要のために制定された『宗祖讃仰作法 音楽法要』です。これは伝統的な声明譜によって構成された『宗祖讃仰作法』に併せて制作されたものです。
 ただ、『宗祖讃仰作法 音楽法要』の全体は、本山の法要で用いられるように制作されたものだけに、巨大な森のように、近寄りがたく、また、一旦、その中に入れば、容易には抜け出せない奥深さがあります。だからでしょうか、本山より音源CDが送られて来て久しくなりますが、知り合いの僧侶に聞いても、まだ誰一人、まともに、それを聞いた者がなく、ましてやそれをお寺や家庭で活用している者はいません。
 宗門挙げて推進している「親鸞聖人750回大遠忌記念事業」の一環として作られ、制作者が相当、苦労して作ったであろうこの素晴らしい作法が、このようなありさまとは実にモッタイナイことです。
 この『宗祖讃仰作法 音楽法要』を何とか、お寺や家庭で簡単に勤められるように出来ないものかと、前後を略して、ご門徒さんと一緒に勤められる部分だけを取り出して、「ダイジェスト版」を作ったところ大好評を博しています。
 今年2月の「こころのともしび法座」(常例法座)で、初めて、編集した音楽に合わせて、お勤めをしたのですが、反響が良く、これからの年中法要にも、たびたびこの音楽法要を用いようということに成りました。
 お寺や家庭で勤められるよう、モデルとなる式次第を作ってみました。それぞれの手持ちの音源、音響環境、ご住職・ご門徒の趣向に応じて、独自の法要を演出して見られてはいかがでしょうか?
  お勤めそのものが音楽となった、この画期的な『宗祖讃仰作法 音楽法要』が普及し、誰の口からも自然にお念仏が出てくるようになったら素晴らしいだろうと思います。そして、親鸞聖人750回大遠忌法要をお迎えする最高の動機(モチュベーション)となることは間違いないと思います。